もののもの言わぬ声
水に浮く花
みづのなかに うかべる花
こゑをはなてり
花、わたしは、一輪の小さな花をイメージする。
可憐で素朴な白い花が一本だけ、静かに浮かんでいる。
その姿が、ハッと目に飛び込んだ瞬間が、「こゑをはなてり」として、幽かかもしれないが、しかし鮮かに私の心に差し込まれる。
その「こゑ」は、人間の言葉で語られる声ではない。
それは、「もののもの言わぬ声」であり、「もののもの言わぬ語り」であるだろう。
ここでいう「もの」は、本来、どのような「もの」であってもよい。特別な「もの」である必要はない。この腕時計であっても、庭先のハーブの鉢であっても、あるいは座っているわたし自身であってもよい。
それらはしかるべき関心を持って注意を澄ませば、もののもの言わぬ声を発していることがわかる。「みづのなかにうかべる花」は、「もの」の「こゑ」の、一瞬の鮮烈さをわたしに届けてくる。